イラストレーターの役割  連載第2回 00/7/19

あなたはイラストレーターという職業の役割をきちんと理解しているだろうか? どの職業においても言えることだが、「自分が周囲からどんな仕事を求められているのか」をきちんと理解するのは非常に重要なことである。
「現場はイラストレーターに対し、何を求めているのか」「現場ではイラストはどのように扱われるのか」などが分かっていなければ、いくら頑張って売り込んでも誰も相手にしてくれないということだ。


あなたはイラストレーターですか? それとも画家ですか?

まずはっきりしておきたいのは、「イラストレーターは画家ではない」ということ。「イラストレーターだって画家の1ジャンル」というのも一理だが、業界では「画家」と「イラストレーター」は明確に区分され、役割分担も別である。
「勘違いしている人が結構いる」と言うのは、よく持ち込みを受けるという某誌編集長。「売り込みに来て、絶対この絵を使ってくれと言ったり、色合いがどうの、質感がどうのとアピールするなどは論外ですね。イラストというものが現場でどのように扱われているのか全く理解していない。これは技量以前の問題です」
一般に言う「画家」とは「描いた絵そのものを売る人」だ。まず絵を描き、そしてそれを売る。作品を作るときは当然、絵の具の質感や微妙な色合いなど、オリジナルでなければ味わえない良さを追求する必要がある。
それに対して「イラストレーター」は「何かに使われる絵を描く人」だ。つまり客の依頼を受け、それから絵を描くのである。作品を作るときは顧客の使いやすさ、顧客の要望などを考慮しつつ、自分なりの味を追求していく必要がある。言い換えれば画家が絵を売るのに対し、イラストレーターは能力を売る職業なのだ。
当たり前のことだが、イラストを使う制作現場が求めているのは、イラストレーターであって画家ではない。それを踏まえず売り込み先で作品の芸術性云々をいくら饒舌に語っても、うんざりされるだけだということを覚えておこう。

イラストレーターに求められているもの

イラストレーターは、多くの場合、プロデューサー、ディレクター、編集者などと呼ばれる「担当者」と共に仕事をすることになる。担当者は例えば本や広告を作成することを目的としている。そして決められた予算内で様々な技能・人材を使い、目的を達成することこそが彼らの仕事である。だから彼らにとってはコピーラーターやデザイナー、カメラマンなどと同様、「イラストレーター」もひとつの駒である。
そして、現場が駒(イラストレーター)に求めているのは「使いやすさ」である。ここでいう「使いやすさ」とは、絵のタイプ、イラストレーター自身の理解力、希望のギャラ、フットワークの軽さ、性格などと含む総合的なものである。担当者は自分の手となり足となる人材を求めているのだから、作品が良くても、予算以上のギャラを要求する者や、担当者と性格的に合わない者、ましてや根本的な理解力に欠ける者は使いたがらない。単に実力があるだけでは採用されないのだ。
だからあなたが作品を持ち込んだときに、相手が知りたいのは、「うちの仕事に合う絵か」、「キャリアはどれくらいあるか」、「違うタイプの絵も描けるのか」、「希望のギャラはいくらなのか」などといった事柄である。
「どんな気持ちでこの絵を描いたか」「どこにこの絵の良さがあるのか」などは関係ない。

イラストレーターの作品はどのように扱われるか

通常イラストレーターの描いたイラストは編集の手を経て、デジタル化され、印刷された後、世に出ることになる。例えば雑誌に使うイラストであれば、まずはスキャニングなどの手段によってデータ化され、制作を担当するデザイナーによってコンピューターの上で切り貼りされる。だから背景を変えたり、文字をかぶせたり、場合によっては、背景に合わせてイラストの色そのものを変えることもある。
したがって絵の「質感」や「微妙な色合い」は必ずしも重要ではない。
「カラーコピーで送ると本来の色合いが分からないので現物で送りたい」と言う人がいるが、制作の現場でも最終的には「スキャナー」でデジタル化し、印刷するわけだからカラーコピーとたいして変わらないわけだ。(また後の連載で述べるが、制作側にとっては売り込みの際に現物を送られることほど煩わしいことはない。返却の手間が必要となるからだ。)

連載第1回「売り込みとは?(6/23)」を見る

連載第3回「売り込み前の準備(8/21)」を見る

連載第4回「どこに売り込むべきか?前半(10/24)」を見る

連載第5回「どこに売り込むべきか?後半(12/14)」を見る

次回は「売り込み前の準備」について

 

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