連載第1回 00/5/9

   作家は個人事業主。自分の商品(作品)がどのように扱われ、どのぐらいの収入が得られるのか。それぐらいは知っておかなければ。 みなさんも作家になったときのために、出版業界の基礎知識を身につけておこう!

今回のテーマ「収入源」

   やっぱり生きていくにはお金が必要。だけど印税だけで食べていける作家はそうそういない。それなら、普通の作家たちの収入源はなんなのか?

1.印税

   言わずと知れた作家の収入源。一般的には本の定価の10%が多い。1000円の本がミリオンセラーになれば、1000円×10%×100万部=1億円。ただミリオンセラーは一年に数冊出るか出ないか。小説なら初版5000部スタートがよくあるケース。
   印税率は作家によってかなりの差がある。売れっ子作家なら、10%を超えて15%なんてこともあるし、新人作家の場合、5%ということも。
   出版不況といわれる現在、刷り部数はどこの出版社でも押さえ気味、相当なヒット作が出ない限り、印税収入だけで食べていくことは難しい。
 「生活にゆとりができるのは、著書が100冊以上になってからだ」というのは、有名作家の言葉。

一般的な作家Aさんの場合(単行本を年1冊出版)
1500円(単行本の定価)×10%(印税率)×5000部(刷り部数)=75万円

2.原稿料

   小説・コラム・エッセイなどの執筆で得られるもの。もちろんたくさん書けば書くほど収入は多くなる。収入の柱。
   原稿料は原稿用紙1枚、1000円〜2万円ぐらいまで。作家のレベル・文章を掲載する雑誌のレベル・専門性の有無などによって、大きな開きがある。雑誌のコラムや文芸誌の小説連載は、1枚2000円〜5000円ぐらいが相場。
   月に書ける原稿用紙枚数を「月産○枚」という。原稿料だけで食べていくには、月産100枚は必要。
   文芸誌の小説連載などの場合、いずれ一冊の本として出版することが多い。印税収入も見込める。

一般的な作家Aさんの場合(月産50枚。1枚の原稿料を3000円とする)
3000円×50枚=15万円(月額)

3.著作料

   特殊なケース。作品の映画化・テレビドラマ化などがあったときに発生する。その規模によって金額はバラバラ。100万円単位の話もあるし、5万円なんてこともある。

一般的な作家Aさんの場合
映画化・テレビドラマ化などの話はなし=0円

4.インタビュー・講演会収入

   作家によって大きな差がある。一回で100万円の講演料を得る大作家もいるが、一般的には5万円〜30万円程度。
   インタビューに至っては、「作家自身の新刊本の宣伝なのだからインタビュー料はない」という雑誌もあるし、逆にスタイリストをつけたりするところもある。

一般的な作家Aさんの場合(月2本のインタビュー。1本3万円とする。講演はなし)
3万円×1本=3万円(月額)

5.その他

   カルチャースクールの講師、文芸賞の選考委員など


一般的な作家Aさんの年収
75万円(印税収入)+180万円(原稿料収入)+36万円(インタビュー収入)=291万円



Aさん(35歳・東京都在住)の言葉

   まだ作家一本でやっていくことは難しい。デビューした頃は特に仕事もなく、貧乏で貧乏で仕方がなかった。しかし書くことに魅せられてこの仕事をしているのだ。楽しいといえば楽しいもの。
   やる気があるならば、「作家とはこんなものなのか」と嫌になるのではなく、「ベストセラー作家になる」ぐらいの心構えでこの世界に飛び込んで来て欲しい。


 「そんなこと言っちゃあ夢がないじゃないか」と思うかもしれないが、これが現実。とにかく文章を書くのが好きで好きでたまらない人じゃないと、作家なんていう職業は成り立たないのかもしれない。
   ただし、ミリオンセラー・映像化・講演会など、当たれば大きい。賭けてみるのも面白い?
   次回は出版界のタブー「部数とは何だ!」をレクチャー。



連載第2回(00/5/30)「書籍の部数」を見る

連載第3回(00/6/22)「雑誌の部数」を見る

連載第4回(00/7/26)「詩の現状」を見る

連載第5回(00/8/22)「Tさんの体験談」を見る

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